あくまでフィクション【映画レビュー】『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』あらすじ&感想(ネタバレ無し)
2020/04/04
TSUTAYA DISCASのDVDレンタルで映画『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』を観たので、その鑑賞記録です。
画像:シネマトゥデイより
あらすじ
1956年、最後の出演作となる映画のラストシーンの撮影が終わり、拍手で見送られたグレース・ケリー(ニコール・キッドマン)は楽屋へと戻っていきます。
花束の溢れる部屋に流れている、彼女とモナコ大公レーニエ3世(ティム・ロス)との結婚を報じるニュース。
グレースは人気絶頂の中で女優業を引退し、モナコ公妃となるべく生まれ育ったアメリカを離れ、バチカンに次いで世界第2の小国のモナコ公国へと豪華客船で旅立ったのでした。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
それから5年後の1961年、大公との間に2人の子供をもうけて母として家庭を守りながら、公妃として公用もこなしつつ暮らすグレースの元へ、アメリカからヒッチ・コック監督が訪ねてきます。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
久しぶりの旧友の来訪に喜びを隠せないグレースでしたが、彼の「疲れてるようだね」という言葉に、少し寂しそうに微笑むのでした。
そして新作『マーニー』に出てみないかというヒッチの言葉に、やはり公妃としての立場もあるため、大公に相談するために返事を保留するグレース。
とはいえ女優としての仕事に沸き立つ心を抑えきれず、彼女はヒッチから受け取った台本を何度も読んでは役作りを考えてしまいます。
そんな折、モナコ公国は隣国フランスとの間に問題を抱え、レーニエ大公は頭を悩ませていました。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
フランス大統領のド・ゴールがモナコ政府に対して、アルジェリアの独立戦争を封じるための戦費をモナコ公国にも負担させようと、圧力をかけてきたのです。
タックス・ヘイヴンによる税金の優遇を求めて、経営拠点をフランスからモナコへ移していた多くの企業に目をつけたド・ゴール大統領は、それら企業から税金を徴収してフランスへ納めるよう要求。
これに従わなければ国境を封鎖するとの声明に、周囲をすべてフランス領土に囲まれ、水や電力などのライフラインまでもフランスに依存していたモナコ公国は窮地に立たされます。
この政治問題で気持ちのゆとりを失って、家族との関係も疎遠になっていくレーニエ大公。
さらにグレースの映画出演についての情報が何者かによってリークされた影響で、国民の大公夫妻に対する批判が強まる中、グレースの映画出演に寛容だったレーニエ大公もついにその考えを翻してしまうのでした。
期待していた女優復帰への道が絶たれたグレースは、もとより公妃としての慣れない生活でのストレスもあって、自暴自棄になりかけてしまいます。
そんなグレースを支えたのは、彼女が誰よりも信頼していたタッカー神父でした。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
何のためにモナコにやって来たのかと、諭すように励ます神父。
彼の言葉に自分を取り戻したグレースは、愛する家族そしてモナコの国を守るために、自分のできることをすべてやろうと決意を固めるのでした。
感想
映画の冒頭で、「この作品は実話を基にしたフィクションです」という断り書きのテロップが表示されます。
つまり、グレース・ケリーがモナコの公妃になったり、モナコがフランスに併合されそうになったりという事実はあるのですが、この映画のような内情は創作によって語られたものだということで。
実際のところヒッチ・コック監督がモナコに行ったという記録も無いし、映画を観たモナコの大公家からは、多くの事実とは異なる部分の内容変更の要求まであったそうです。
大公家としては、特にレーニエ3世の性格や夫婦の間の様子の描写に不満を感じたようで。
とはいえそういった要求に対応することなく公開された本作は、クレームを回避するために冒頭の断り書きを追加したんでしょう。
観る側としてはフィクションの無い映画なんてあり得ないと思ってますから、どちらでもかまわないんですが、何であれグレースが広告塔の役を果たしてモナコの窮状を救ったというのは本当ですからね。
おそらく本作のような事情も、多少は実際にあったものだと思って差し支えないかと。
そういう意味で、モナコという観光地とかF1グランプリといったイメージしかなかった国について、いろいろ知ることができた作品としても面白かったですよ。
ただグレース・ケリーがモナコを救うためにとった行動や、ラストのクライマックスといえるシーンの内容といった点で、どうもその意図するところがハッキリしないというか説得力が弱いような印象が残りまして。
何となく、感動というところまで心が動かなかったなという、少しモヤッとした気分で観終わりました。
ですから『公妃の切り札』なんていう邦題は、大げさで的を外してるような気もするんですが。
それ以外の部分では、一つの面白い物語として十分に楽しめて満足できた映画でしたよ。
作品データ
●原題
Grace of Monaco
●監督
オリヴィエ・ダアン
●出演者
ニコール・キッドマン
ティム・ロス
●日本公開年
2014年
●上映時間
103分