天才少年の一人旅【映画レビュー】『天才スピヴェット』あらすじ&感想(ネタバレ無し)
2020/04/04
TSUTAYA DISCASのDVDレンタルで映画『天才スピヴェット』を観たので、その鑑賞記録です。
画像:シネマトゥデイより
あらすじ
ロッキー山脈が美しく広がるアメリカ西部のモンタナ州の山あいで、幼い少年T.S.(テカムセ・スパロウ)スピヴェット(カイル・キャトレット)は4人の家族に囲まれ、愛犬タピオカも一緒に幸せに暮らしていました。
牧場を営む父はカウボーイとしての素質のある弟を溺愛し、昆虫の研究をライフワークとする母(ヘレナ・ボナム・カーター)は毎日調査に夢中、そしてミスコン出場を夢見る姉はコンテストの話ばかり。
それでも“T.S.”は、二卵性双生児として一緒に生まれた仲良しの弟、レイトンと遊ぶ毎日が大好きでした。
画像:映画『天才スピヴェット』日本公式サイトより
彼はいわゆる天才児でしたが、それは学校の先生にも評価されず、家族でさえ彼の知能の高さを誰も理解してやることはできませんでした。
そんな周りの無理解に傷ついてしまうこともありましたが、“T.S.”は健気に普通の子供としての毎日を過ごしていたのです。
でも、それは1年前までの話。
弟のレイトンが、銃の暴発事故で死んでしまったのが1年前でした。
それからしばらく経ち、家族は以前と変わらない毎日を続けられるようになりましたが、レイトンのことには一切触れないようになりました。
そんなある日、“T.S.”に電話がかかってきます。
画像:映画『天才スピヴェット』日本公式サイトより
出てみると相手はスミソニアン博物館の副館長で、“T.S.”の発明した永久機関とも呼べる装置が名誉ある賞に決まったので、その受賞スピーチをして欲しいとのこと。
副館長はまさか小学生がそんな発明をしたとは思いもよらず、電話に出た“T.S.”にお父さんを呼ぶように言うのですが、彼は父は口がきけないからと嘘をついて自分で応対することに。
いずれにせよ彼は学校があるので、その招待を断ることにしたのでしたが、やがてその考えが変わっていきます。
自分のことを誰も理解してくれず、大好きな弟もいないこの家に自分の居場所が無くなってしまったような、そんな孤独な気持ちで彼は家を出て行く決意を固めたのでした。
大きなトランクに荷物を一杯につめて、まだ日も昇らないうちにそっと自分の部屋を出た“T.S.”は、死んだその日のままになっている弟の部屋へ行きます。
散らかった部屋をじっと眺めて弟に別れを告げると、今度は昆虫の調査に出かけて留守の母親の部屋に行き、「心配しないで」と置手紙を書いてから外へ。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
日に3度しか通らない列車に乗り込むために、薄明るくなってきた道を重いトランクを運びながら線路へと急ぎます。
やがて白んできた早朝の景色の中、遠くからやって来る列車の影。
こうして“T.S.”は、弟の死によって負った心の傷の癒しを求めるかのように、ワシントンD.C.にあるスミソニアン博物館を目指して小さな冒険の旅へと出発したのでした。
画像:映画『天才スピヴェット』日本公式サイトより
感想
『アメリ』で有名になった監督の作品で、劇場公開時は3D上映された作品です。
アメリカ西部の大自然の美しい情景や、“T.S.”の目を通した記憶や空想の中のユニークな描写は、3Dで観ていたらさぞかし楽しめたろうなとチョット残念な気もしますが。
2DのDVD鑑賞でも、なかなか面白いと思えた映画でしたよ。
幼い男の子がたった一人で長距離を旅するというのは、現実を知る私達から見ると危なっかしい思いもしますが、やはり『アメリ』を作った監督らしい少し夢のある演出がされてまして。
大人に追いかけられたり利用されたりするシーンもありますが、助けてくれる人達もいて、最後にはホッとするような結末へと導かれます。
健気に頑張る小さな子供の姿を観て、フフッと笑ったりチョット胸を痛めたり、そして最後にはホンワカした気分になれるような印象の作品ですね。
作品データ
●原題
L'extravagant voyage du jeune et prodigieux T.S. Spivet
●監督・脚本
ジャン・ピエール・ジュネ
●出演者
カイル・キャトレット
ヘレナ・ボナム・カーター
●日本公開年
2014年
●上映時間
105分