子供の夢の映像化【映画レビュー】『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』あらすじ&感想(ネタバレ無し)
2017/06/30
TSUTAYA DISCASのDVDレンタルで映画『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』を観たので、その鑑賞記録です。
画像:映画.comより
あらすじ
画像:インターネット・ムービー・データベースより
ドラッグストアでバイト中だったジェイク(エイサ・バターフィールド)は、急な電話連絡を受けて祖父のエイブ(テレンス・スタンプ)の家へと急いでいました。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
店で世話になっている責任者の女性の車に乗せてもらい、その道中で電話をかけてみると、祖父はパニックを起こしている様子で不安を感じるジェイク。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
子供の頃から大好きな祖父も最近は認知症気味で、忙しい両親に代わりジェイクが何かにつけて面倒をみていたのです。
ようやく家に着いたジェイクが家に入ってみると、あたりは既に暗いというのに明かりもついていない部屋は、何者かに荒らされたように散らかっています。
祖父を探して裏庭に行ってみると、血のついた懐中電灯が転がっていて、その先には倒れている誰かの姿が。
慌てて駆け寄ったジェイクは、それが祖父のエイブだと知りますが、恐ろしいことに彼は目をえぐられていたのです。
急いで救急車を呼ぼうとするジェイクの手をつかんだエイブは、最後の言葉として「島へ行け、エマーソンを見つけろ」と言い残して息絶えたのでした。
ジェイクがまだ幼い頃、世界各地を旅して得た様々な奇妙な体験を写真を見せながら語ってくれたエイブ。
それは、体内にたくさんの蜂を飼っている少年の話や、体が軽くて宙に浮くことのできる少女の話で、ジェイクはそんな不思議な話も祖父のエイブのことも大好きだったのです。
けっきょく彼の謎の死は野犬に襲われたのだろうということで片付けられましたが、1ヶ月経ってもジェイクはまだショックを引きずっていました。
そんなある日のこと、ジェイクは彼の誕生パーティーに来ていた叔母から、エイブの遺品だと言って1冊の本を手渡されます。
それはエマーソンの詩集で、彼は本の間に1枚の絵葉書を見つけますが、その差出主はケインホルム島にある施設にいるペレグリンとなっていました。
祖父の言葉が頭に残っていたジェイクは、その島へ行きたいと両親に訴え、彼のかかりつけのカウンセラーの「祖父の死に区切りをつけるきっかけになる」というすすめもあって、彼は父親と共に旅立つことに。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
そうして、住民が100人にも満たない小さな島にたどり着いたジェイクは、早速ペレグリンがいるかもしれない施設を訪ねてみます。
ところが施設はすっかり廃墟になってしまっていて、ペレグリンはおろか誰もいる様子はありません。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
住民の話によると、70年以上も前になる第二次大戦中の1973年の9月に、ドイツ軍の爆撃によって施設は破壊されてしまったのだそうでした。
がっかりしたジェイクでしたが、何か手がかりになるものが無いかと、翌日また廃墟へと行ってみることに。
すると、誰もいないと思っていたところに突然人影が現れ、驚いて駆け出したジェイクは躓いて転んだ拍子に頭を打ち、気を失ってしまいます。
ふと気がつくと、目を覚ました彼の前には、数人の子供たちが並んでいました。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
これが、ジェイクと奇妙な子供たちとの最初の出会いであり、彼の不思議な冒険の始まりだったのでした。
感想
これは公開されたときに、3Dで観ようかどうしようか迷って、結局のところ劇場へ足を運ばず仕舞いになってしまった作品でして。
まぁDVDで観終わった感想としては、特に3Dで観たほうが良かったという印象も無く、2Dで観ても十分に面白かったので後悔はありませんがね。
監督は、「奇妙な」味のある作品を生み出すことで有名なティム・バートン監督でして。
私が観た同氏の監督作は、直近では『アリス・イン・ワンダーランド』や『ダーク・シャドウ』なんかになるんですが、これらを含めて思い返してみるとけっこう楽しめた作品が多いんですよね。
そう考えてみると、賛否両論が極端なティム・バートン氏ですが、私は割と好きなタイプの監督なのかも知れません。
本作もやはり、タイトルどおり「奇妙な」作品でして、テイスト的には『アリス・イン・ワンダーランド』に似てる気がします。
特殊な能力を持った子供たちが何人も登場するんですが、単に特殊というよりもほとんど妖術とか魔法といった類の能力で、いわゆるSF的な超能力とは違ってますね。
それらの子役を含めて登場する役者さんたちは、ほとんど憶えの無い人たちばかりだったんですが、本作にもまたサミュエル・L・ジャクソンが出てまして。
最近このジイさん、やたらアチコチに出てくるなーとか思ったり。
主役のジェイクを演じるエイサ・バターフィールドは、『ヒューゴの不思議な発明』でも主人公のヒューゴを演じてましたが、ずい分と成長して面影も感じられませんでしたよ。
ストーリーとしては、主人公と「奇妙なこどもたち」を中心としたファンタジックな内容になってるんですが、設定が込み入ってて少し分かり難いんですよね。
子供たちの能力のほかにも、タイムトラベル的な要素が含まれてまして、キャラクターや世界観の設定を説明するのに作品の3分の2くらいが費やされてるんですよ。
そのせいで、話の流れがやや冗長にも感じられるんですが、そうして時間をかけて説明した割には辻褄が合わないところやハッキリ事情が飲み込めない部分も多くて。
理解しようと考え始めると、物語についていけなくなったり、わけが分からなくなってしまいそうになるんですね。
ですから、そういう現実感の希薄さという意味では、何だか子供の見た夢物語といった印象の作品ですよ。
それも少し毒のある夢、というかチョットした悪夢。
終盤の3分の1くらいは、ようやく説明が終わり、子供たちが活躍し始めてテンポ感やクライマックス感はあるんですが、それも子供が頭の中で思い描くような内容でして。
半分くらいは役に立たないながらも、子供が自分の特殊能力を使って大人の敵と戦うシーンは、手に汗握るというよりコミカルな雰囲気だったり。
ホローという「え!『BLEACH(ブリーチ)』?」といった感じの化け物との戦いも、オモチャの戦争といった雰囲気ですし。
観ると分かりますが、実際のところあのマスクの双子が最強で、あれって無敵のチートキャラじゃね?って思ったりもしますが。
何もかもが、子供の夢だと思えば許せるかなと。
つまり本作は、大人の頭で理解しようとするのではなく、子供の気持ちで夢を見るように楽しむのが一番じゃないでしょうかね。
というわけで、常識や理屈で凝り固まった大人の心はひとまず捨てて、柔軟で羽ばたくような子供の心に戻って観ることをオススメしたい作品でしたよ。
作品データ
●原題
Miss Peregrine's Home for Peculiar Children
●監督
ティム・バートン
●出演者
エイサ・バターフィールド
エヴァ・グリーン
テレンス・スタンプ
サミュエル・L・ジャクソン
●日本公開年
2017年
●上映時間
127分