不親切な作品【映画レビュー】『秘密 THE TOP SECRET』あらすじ&感想(ネタバレ無し)
2020/04/04
TSUTAYA DISCASのDVDレンタルで映画『秘密 THE TOP SECRET』を観たので、その鑑賞記録です。
画像:シネマトゥデイより
あらすじ
科学警察研究所・法医第九研究室、通称「第九」。
そこでは死者の脳から直接取り出した視覚記憶を映像化するシステムを利用した、「MRI(Memory Reproduction Imaging system)捜査」が実験的に行われていました。
この捜査方法によって、死亡した犯人や被害者の記憶から犯行の情報を得ることで、飛躍的に犯罪捜査にかける時間や人力を節約することができるようになるのです。
しかし個人の記憶から情報を得るという点で、その信憑性の程度に疑問があるということで、これまでの捜査においても有効な成果をあげてきたにもかかわらず、「第九」はまだ正式な捜査機関とは認められていませんでした。
さらに「MRI捜査」には、大きな問題点が1つありました。
それは死体の脳から記憶を取り出す際に、生きている人間の脳を媒介にしなければならないということで、その結果として媒介となる人間の精神を蝕んでしまう危険があるということです。
つまり、強い意志で死者の記憶を客観視することができなければ、その記憶と自分の記憶が混乱してしまい、最終的に犯罪者や被害者の精神状態に自らの意識が飲み込まれてしまう可能性があるのです。
かつて「第九」では、28人を殺害した連続殺人犯の貝沼(吉川晃司)を「MRI捜査」にかけた結果、媒介となった捜査官が何人も精神に異常をきたして自殺するなどの事態になり、その存続が危ぶまれたこともありました。
画像:映画『秘密 THE TOP SECRET』公式twitterより
しかし現在、ただ一人の創設時メンバーの薪剛(生田斗真)が室長となり、その努力によって「第九」は正式認可を目標として捜査協力を続けているのでした。
ある日そこへ、青木一行(岡田将生)という若いエリート捜査官が配属されてきました。
彼は初めて見る「MRI捜査」の映像に驚愕し、その可能性に期待を寄せます。
画像:映画『秘密 THE TOP SECRET』公式twitterより
そして彼に与えられた最初の任務は、3年前に起きた一家惨殺事件の犯人としてつい先日死刑になった露口浩一(椎名桔平)の記憶を見ること。
その事件では、露口の自宅で彼の妻や娘が刺殺されたのですが、長女の絹子ただ一人だけ行方が分かりませんでした。
露口は自分が一家全員を殺害し、絹子も殺して他の場所に捨てたと供述したため逮捕。
警察は絹子が遺棄されたと思われる現場を捜索しますが、遺体は見つかりません。
結局そのまま、露口の自供と現場の状況から、彼は犯人として死刑になったのです。
画像:映画『秘密 THE TOP SECRET』公式サイトより
今回の青木を媒介とした「MRI捜査」の目的は、その露口の記憶から絹子の行方もしくは遺体の場所を突き止めることでした。
ところが記憶から再生された映像には、予想もしなかった状況が映し出されます。
画像:映画『秘密 THE TOP SECRET』公式twitterより
露口の目に映る自宅の部屋の中には、家族を包丁で何度も刺している絹子がいました。
犯人は死刑になった露口ではなく、何と行方不明の絹子だったのです。
露口は絹子の罪を自ら被り、身代わりとして警察に捕まったのでした。
この件はすぐさま報告されましたが、容疑者が既に死刑執行された後ということもあり、誤認逮捕という失態の露見を嫌った警察上層部は事実のもみ消しを決定。
そのうえ今後同様なことが起きる可能性を恐れて、「第九」の正規機関としての認可も当分の間無いとの通達まで出てしまうのでした。
サイコパスの殺人鬼である絹子を野放しとするこの対応に納得できない薪と青木、そして「第九」のメンバー達は諦めずに事件の真相を明らかにすることを決意します。
画像:映画『秘密 THE TOP SECRET』公式サイトより
しかしそのためには絹子が生きていること、そして彼女こそが真犯人であることを示す証拠を見つけることが必要です。
彼らは、事件の捜査に関わった所轄の眞鍋刑事(大森南朋)を巻き込んで行動を開始するのでしたが、その先には貝沼の事件にまで繋がる、信じられない事実が待っていたのでした。
画像:映画『秘密 THE TOP SECRET』公式twitterより
感想
まず最初に言いたいのは、この映画を記事にするかどうか迷ったんですよね、というのもハッキリ言って観てつまらなかったんですよ。
自分で面白くなかったと感じて、当然人にもすすめられない作品を記事にするのはいかがなものかと思うんですが、観たモノは記録として記事にするというのが方針なんで、とりあえずそれに従うことにしました。
というわけで文句ばっかりの感想になることについてご勘弁頂くとしまして、とにかくこの映画、ストーリーが分かり難く観客に対して不親切極まりないです。
いろんな要素というか物語を詰め込むだけ詰め込んで、伏線とかも張り巡らした挙句の果てに、最終的にそれらの説明や回収をすることなく投げっぱなしで終わってるんですよね。
観終わった後で調べてみると、原作の漫画を読んでるとある程度分かる部分も多いようなんですが、原作の読者さえも疑問に感じるような部分もあるみたいで。
何でもかんでも説明してしまうというのも良くないとは思うものの、これはあまりにも説明が足りなさ過ぎます。
この作品は近未来を舞台として、現代より進んだ科学技術を利用して事件を解決する捜査官達を描いたSFミステリーでして、その設定自体はとても面白いものなんですよ。
ですから、私は読んでないんですが原作のほうはきっと面白いんじゃないかと思うんですね。
でもこの映画のほうは、ミステリーにしては事件解決へと向かう流れの描き方がずさん過ぎて、何が何だか分からないんです。
結局解決したのかどうかさえもハッキリとは描かれてなくて、いろいろとホッタラカシにしたまんまでエンドロールに至る感じでして、観終わったときのカタルシスが一切感じられませんでしたよ。
物語を分かり難くしている原因として、「MRI捜査」による脳内映像と、映画の演出によるイメージシーンとしての映像が混在して、区別を明確にしてない構成の仕方というのもあると思います。
もちろん注意深く観て、画面の構図が主観的か客観的かとか、音が入ってるか入ってないか(「MRI捜査」の映像には音が含まれないという設定になってます)とか気をつければ分かることなんでしょうが。
娯楽として映画を楽しもうとしている観客に、そこまでの認識力を要求するのも、酷なんじゃないかなと思いますよ。
それから、登場する役者さんやキャラクターについても、疑問を感じました。
映画のオリジナルキャラとして、大森南朋さんが演じる所轄刑事の眞鍋ですが、この人チョット感情的になり過ぎ。
何かというとわめいたり怒鳴ったり、とにかくエキセントリックなんですが、その感情の起伏の大きさに説得力が感じられないんで、観てるコチラは気持ちが引くというか醒めてしまいます。
いっそ登場しなくてもいいんじゃね?とか思うんですが、そういう意味ではもっと要らない気がしたのが、同じくオリジナルキャラでリリー・フランキーさん演じる精神科医。
この医者は、いきなり出てきて謎めいた雰囲気醸し出すんですが、だから何?感が有りまくりです。
登場シーンも少ないうえにストーリーにさほど重要に絡むわけでもないんで、特に必要とは思えないキャラクターですね。
さらに役者さんに関して問題を感じたのがストーリーのキーパーソンである露口絹子なんですが、織田梨沙という女優さんが演じてまして、この人が端的に言って演技がヘタ。
重要な役どころにも関わらずセリフ回しがあまりにもつたなくて、この人がしゃべると物語への集中力が途切れてしまうというか、いろいろと残念な感じです。
見た目は雰囲気があって、黙ってればかなり役にピッタリな印象はあるんですけれども、大事な役どころなんだからもうチョット経験のある女優さんにやってほしかった気がしますよ。
というわけで面白くないうえに長尺で、かなり退屈で疲れた映画でしたが、好意的にとらえるならば観客にいろいろ考えさせてくれる作品と言えますね。
ですから、映画を観た後でアレコレ想像したり深読みしたり、友達と一緒に観てお互いにアーだコーだと自分の感想や解釈を言い合うには絶好の作品ではないかと。
ただし、映像に一部やや描写のグロいシーンがあるので、そういうのが苦手な人は観ないほうが良いでしょう。
作品データ
●監督
大友啓史
●出演者
生田斗真
岡田将生
大森南朋
●日本公開年
2016年
●上映時間
148分