とにかく嬉しい再登場【映画レビュー】『ジェイソン・ボーン』あらすじ&感想(ネタバレ無し)
2020/04/02
TSUTAYA DISCASのDVDレンタルで映画『ジェイソン・ボーン』を観たので、その鑑賞記録です。
画像:映画.comより
あらすじ
これまでの過去に、自分のせいで死んでいった人々、そして自分が殺してきた人々が現れては消えていく。
そんないつもの悪夢から目を覚ましたジェイソン・ボーン(マット・デイモン)は、ギリシャとアルバニアの国境近くを走るトラックの中にいました。
CIAの秘密計画を暴くための内部告発の手助けをし、追っ手の前から生死不明のまま姿を消した彼は、それから10年以上の時を経た今も命の危険を感じつつ逃亡生活を続けていたのです。
蓄えていた非常用の資金も底を尽き、日銭を稼ぐために挑戦者として闘うことになった賭けファイトの会場へと向かうトラックの中で、疲れ果てた目で苦痛に耐えるジェイソン。
CIAによって受けた、殺人マシーンになるための洗脳や身体強化による後遺症と、眠るたびに現れる悪夢は今でもまだ彼を苦しめていました。
会場に到着し、休む間もなく始まった賭けファイトで観客に囲まれながら、うつろな目で相手を見るジェイソン。
しかし、これから行われるはずの激しい殴り合いを期待して沸き立つ人々を無視するかのように、彼は一撃で相手を打ち倒してしまいます。
長く続く逃亡生活に精神的にはボロボロになりながらも、その強靭な肉体と戦闘能力は微塵も失われていないようでした。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
一方その頃、とある女がアイスランドのレイキャビクにあるハッカー達の集まる秘密施設を訪ねます。
彼女は、CIA局員でありながらジェイソンの逃亡を助けたために追われる身となり、彼と同じように身を隠して生きていたニッキー・パーソンズ(ジュリア・スタイルズ)でした。
局員時代の能力を生かし、今では反政府組織の一流ハッカーとなっていた彼女は、ノートPCを開くと造作も無くCIAの極秘資料へアクセスします。
目的はジェイソンも関与していた秘密計画の情報でしたが、そこで目にした資料の中に彼の父親に関する情報を発見したニッキーは、急いで内容を確認しつつデータをUSBにコピーしました。
ところがその行為は即座にCIAに探知され、施設の電力遮断によってハッキングは妨害されますが、必要なデータをコピーし終えていたニッキーはPCに火をつけ逃亡するのでした。
メインサーバーに侵入されて大騒ぎになったCIAの会議室で、国家情報長官に事態の説明をするCIA長官のロバート・デューイ(トミー・リー・ジョーンズ)ともう一人の女性。
彼女は、若くしてCIAサイバー部の部長に抜擢されたエリート局員で、今回のハッキングを最初に察知したヘザー・リー(アリシア・ヴィキャンデル)でした。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
ヘザーは、反政府組織の資料や顔認証システムを使った空港画像の解析などによって、ハッキングの犯人がニッキーであることを突き止め、しかも彼女のUSBに密かに追跡ソフトを侵入させたことを報告します。
その成果によってニッキー追跡のオペレーションを任された彼女でしたが、デューイCIA長官はローマで作戦中だった秘密諜報員に連絡を取り、彼にもニッキーを追わせるのでした。
なぜならニッキーはジェイソンとの繋がりが推測され、長官にとってジェイソンは、CIAの秘密計画を危険にさらす排除すべき邪魔者だったからです。
彼の目的は、ニッキーとジェイソンの抹殺でした。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
そんなCIAの追跡を感じつつ、ニッキーがやって来たのはギリシャのアテネ。
そこではジェイソンがまた賭けファイトをやっていたのですが、見物人の中にニッキーの姿を認めた彼は、さらにファイトの後で彼女からのメモを見つけます。
メモに従って国会前の広場に行き、ちょうど行われていた大規模なデモで騒然とした群衆の中、ニッキーと再会するジェイソン。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
今更のように危険を冒して会いに来たニッキーをいぶかしむジェイソンでしたが、彼女はCIAが新たに怪しい計画を秘密裏に実行しようとしていることを彼に話します。
しかし自分が隠れて生き延びるだけで精一杯だと、聞く耳を持とうとしないジェイソン。
そこでニッキーは彼の興味を引くかのように、彼の父親がかつてCIAの秘密計画に関与していたことを教えるのでした。
父親は重要な役職にはなかった単なる分析官で、テロに巻き込まれて死んだという記憶のある彼は、それを聞いて自分の記憶に疑念を抱きます。
ニッキーの言葉を信じて協力すべきなのかどうか、迷うジェイソンでしたが、そんな暇も与えないかのように現れる、二人を追うCIA捜査官達の姿。
果たしてジェイソンはどんな選択をするのか、そして二人はこの状況を逃げ延びることができるのでしょうか。
感想
ついに、ジェイソン・ボーンが帰ってきましたね。
『ボーン・アルティメイタム』で過去の記憶を取り戻し、死んだかと思われたラストシーンで実は生きていて、水中を泳ぐ姿を最後に私たちの前から消えたジェイソン。
5年近く前には『ボーン・レガシー』が公開され、これが新シリーズとなって、これまでのボーンシリーズは全三部作として完結したものと思っていたんですが。
マット・デイモン主演で、続編が作られるなんて嬉しい限りです。
とはいえ、さすがに10年近くのブランクを経て作られた本作は、続編と呼ぶにはいろいろと変わったところも多くて、新シリーズと考えても間違いではないかと。
何しろ、これまでは自分の失われた記憶を追い求めて、CIAを相手に戦い続けてきたのですが、今回は自分というよりも父親に関連した記憶を追う話になってますから。
最後のほうは死んだ父親の復讐が狙いのような流れになって、ストーリーの趣がこれまでとは違ってきた感じを受けました。
さらに対するCIAも技術が進んで、ITを主としたテクノロジーを駆使してジェイソンを追いつめるので、彼も今回はいろいろと苦労が多かった様子でしたね。
しかもこれまでは助けてくれるパートナーの存在がありましたが、本作では基本的に一人ぼっちなんで、何だかいろんな意味で救いの無い戦いに感じられました。
そしてシリーズの持ち味の一つとして、孤立無援で何の装備も無いジェイソンが、身の回りの小道具を巧妙に逃亡に利用したり、あるいは武器に代えて臨機応変に敵と戦ったりするという要素がありまして。
そういうシチュエーションが、組織のバックアップで最新技術を利用できる『007』や『ミッション・インポッシブル』等とは対極で、スパイモノとしてリアリティーがあって面白かったりするんですが。
今回はそんな身近なアイテムを利用したシーンは少なめというか、ジェイソン自身の体を張った逃亡や戦闘のシーンが少なめでしたね。
やはりマット・デイモンの年齢も考えると、そんな演出は控えざるを得ないといったところなんでしょう。
ただテクノロジーの見本市を舞台にしたシーンがあって、そこで最新技術を使った2つのアイテムをいつもの感じでジェイソンが懐へチョロまかすんですが。
その内の1つはすぐに利用して、もう1つは使わないのかなと思ってると、忘れた頃に最後の最後で有効活用するというオチがあって、そこは面白かったですね。
面白かったと言えば、本作でジェイソンは賭けファイトで逃亡生活の日銭を稼いでいるという設定なんですが、作品冒頭のシーンが初めてのファイトだったのではないかと思われ。
闘いが始まると即座に一発KOしてしまうという、賭けファイトのショーとしての意味をまったく理解してない様子だったのが。
次のアテネでのファイトシーンでは、八百長をして闘いを長引かせている描写で、おそらくショーの意味を理解したんだなと思われる様子に変わってまして。
きっと賭けファイトの主催者に怒られて、ジェイソンも手抜きをすることを憶えたんだなと、そんな想像をして笑ってしまいましたよ。
それから本作のほかの見所を挙げるならば、やはり派手なカーチェイスですかね。
ジェイソン自身のアクションシーンが少ない代わりに、彼のバイクや車を利用した追跡劇がド派手で見ものです。
ただ、そのカーチェイスに限らないんですが、アクションを映したシーンはどれもカット割を短くして、しかもカメラがグラグラ動き続けるんで、見辛いのには閉口しました。
確かに躍動感は感じられるんですが、あまり動体視力を求められる映像は勘弁してほしいですね。
ともあれ、そんな躍動感と共にスピード感もあって、一瞬も目を離せないテンポの速い映像やストーリーは十分に楽しめましたよ。
果たしてボーンシリーズはここからまた始まるのか、それともこれが最後になるのか分かりませんが、さらに続編が作られることを心から期待してます。
ちなみに、本作中でCIAの極秘計画のファイルのリストが表示される場面があるんですが、その中に「アウトカム計画」も含まれてたんですよね。
「アウトカム計画」というと、まさに『ボーン・レガシー』のプロジェクト名でして、それがあったということは『レガシー』のほうも無かったことにするわけじゃないのかな?とも思われ。
スピンアウト・シリーズとして今後も継続するのなら、そちらも楽しみに待ちたい気がしますね。
作品データ
●原題
Jason Bourne
●監督
ポール・グリーングラス
●出演者
マット・デイモン
アリシア・ヴィキャンデル
トミー・リー・ジョーンズ
●日本公開年
2016年
●上映時間
124分