お金で永遠の命を得る方法【映画レビュー】『セルフレス/覚醒した記憶』あらすじ&感想(ネタバレ無し)
2020/04/02
TSUTAYA DISCASのDVDレンタルで映画『セルフレス/覚醒した記憶』を観たので、その鑑賞記録です。
画像:映画.comより
あらすじ
才能のある建築家として名を馳せ、やり手の実業家としての手腕も生かして会社を興し財を成したダミアン(ベン・キングズレー)。
しかし年老いた彼の体は癌に侵され、肺や肝臓にも転移して余命は半年にも満たないと宣告されます。
自らが設計し建築した高層ビルの部屋の窓から眼下に広がる景色を眺めつつ、自分に残された命のことやこれまでの人生に思いを馳せるダミアンの表情は、後悔や悲痛さで満たされていました。
ただ一人信頼できる親友であり会社設立時からのパートナーでもあるマーティン(ヴィクター・ガーバー)との会食のとき、彼は癌が進行したことや余命のことを打ち明けます。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
悲しい目で見つめる友人に彼は、
「なに、幼い息子を失った君たち夫婦の悲しみに比べれば、私のような老人が死ぬことなんてどうってことないよ」
と笑って言うのでした。
帰りの車の中でダミアンは娘に電話をしますが、相変わらず戻ってくるのは留守番電話のメッセージだけ。
仕事人間で家庭を顧みず、娘が幼い頃に離婚してからも疎遠が続いているダミアンは、ここ何年も彼女とは顔も合わせていませんでした。
自分の死期を悟ってからは家族に対する自分の態度を悔やみ、連絡を取ろうと娘に何度も電話をかけていたのですが、向こうからの折り返しも無く会うことも出来ずにいた彼はついに彼女の職場へと足を運びます。
しかし、いまではNPOを主宰して立派に働いている娘のオフィスへとやって来たダミアンに、娘は冷たいそぶりで応えます。
病気のことは隠しながらも彼女との仲を修復したいダミアンは、せめてNPOに経済的援助でもと小切手を差し出しますが、それさえも拒絶し「仕事があるから帰って」と言い放つ娘につい我慢がしきれず、
「こんなのは仕事じゃない、子供のわがままだ!」
と侮辱の言葉を吐いてしまうのでした。
娘との関係の修復もうまくいかず、失意のままオフィスの自分の部屋へと戻ったダミアンでしたが、ついにそこで血を吐いて倒れてしまいます。
そして、自分の死まで一刻の猶予も無いと悟った彼は、ある決意を固めるのでした。
実は彼には、命を永らえる方法の心当たりが一つだけあったのです。
彼の手元には誰から届けられたかも分からない名刺が一枚あり、その表には「フェニックス」というロゴと連絡先、そして裏には手書きで「力になってくれる」と書かれていました。
以前、病気が進行する中で藁にもすがる思いでそこに連絡を取ってみた彼は、その「フェニックス」の施設へ赴き、驚異的な技術を目の当たりにしたのです。
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それは、人間の記憶や意識を他の肉体へと移植するという、世間には知られていない極秘の最新技術でした。
責任者のオルブライト(マシュー・グード)によると、移植する肉体は彼の言葉で言うところの「空の器」であり、見た目は普通の人間とまったく同じですが、バイオテクノロジーで作られた完全に人工的な体とのこと。
病魔に冒された体を捨て、その肉体に記憶と意識を移植すれば、ダミアンは生き続けることが出来るわけですが、それはこれまでの人生をすべて捨てるという意味にもなります。
さらに技術的な不安もあり、これまで迷っていたダミアンでしたが、ついにその処置を受けることを決意した彼はオルブライトに依頼の電話をするのでした。
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再び親友のマーティンに連絡を取り、「フェニックス」の施設のあるニューオリンズでランチの約束をしたダミアンは、その食事の席で突然倒れます。
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しかしそれは自分の死を偽装するためで、救急車に乗せられた彼は、そのまま「フェニックス」の施設へと運ばれます。
こうしてついにダミアンは、これまでの人生と病気の体を捨て、新しい人生と体を手に入れたのですが、その裏には彼の知らない事実が隠されていたのでした。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
感想
『ザ・フォール/落下の王国』を代表として、めくるめくような映像美で評価の高い作品が有名なターセム・シン監督によるSF映画です。
ただSFと言っても舞台は現代で、一般には知られていないながら実は一部の富裕層だけは知っている、想像を超える科学や医療の技術が、今の時代でも存在するということなんですね。
その技術というのが、記憶や意識を別の体に移すことのできる装置というのが、この作品の設定で。
邦題の『覚醒した記憶』というのはチョット内容からズレてるような気がしますが、原題の『Self/less』というのは「自身」を「無くす」という意味でしょうか?
「selfless」と書けば、「私利私欲の無い」といった意味らしいですけれどもね。
とにかく死期を悟った大富豪が、これまでの自分は死んだことにして、新しい体を手に入れて新しい自分としての人生手に入れることからストーリーが始まります。
その新しい体になった主人公をライアン・レイノルズが演じてまして、最近の作品では『デッド・プール』のユニークなダーク・ヒーローが記憶に新しいですが。
本作ではヒーロー役ではないながらも、格闘シーンやカーチェイスもあって、アクション映画としても楽しめましたね。
それからついでに、私は米TVドラマの『エイリアス』が好きで観てたんですが、その中でお父さん役だったヴィクター・ガーバーが出てたところも、何だか嬉しかったです。
ストーリーとしてはとりわけ変わった内容というわけではなく、展開も予想の範囲内というか概ね思ったとおりに話がすすむので、大どんでん返しに驚くというようなことはほぼ無いのですが。
その分、安心して話の流れや登場人物の心の動きをジックリ楽しむことができる作品です。
そういう意味で、広い観客層に受け入れられやすい佳作として、いろんな人におすすめできる映画ですね。
ちなみに、ターセム・シン監督としては映像にかたよらずストーリーがしっかりした作品だなという印象ですが。
主人公が見る幻覚のようなフラッシュバックのシーンは監督らしい色彩感や美しさを感じさせる出来になってるので、監督のファンはそのへんも多少は楽しめるのではないかと。
作品データ
●原題
Self/less
●監督
ターセム・シン
●出演者
ライアン・レイノルズ
ベン・キングズレー
ナタリー・マルティネス
マシュー・グード
ヴィクター・ガーバー
●日本公開年
2016年
●上映時間
117分