自閉症のダークヒーロー誕生【映画レビュー】『ザ・コンサルタント』あらすじ&感想(ネタバレ無し)
2017/06/22
TSUTAYA DISCASのDVDレンタルで映画『ザ・コンサルタント』を観たので、その鑑賞記録です。
画像:映画.comより
あらすじ
とある養護施設に、両親に連れられてやって来た少年とその弟。
弟のほうは、少年を見守るようにおとなしく側に座っていました。
施設の責任者と話している両親は、自閉症だと診断された少年を入所させるよう勧められています。
軍人である父親の転勤による引越しの多さが彼に悪影響があるのではと心配する母親に対して、父親は息子を自分の手で育てることにこだわって彼の入所を拒んでいるようです。
そんな会話をよそに、無心にジグソーパズルを組み立てている少年でしたが、そのパズルは絵を下にした裏返しになっていました。
彼は、無地の裏面だけを見ながらパズルを解いていたのです。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
やがてパズルを完成させた彼でしたが、最後の最後でピースが一つ足りないことに気づいて、急に落ち着きを失って騒ぎ出します。
そんな風に彼は、自閉症の特徴と思われる不安定な部分もありましたが、しかし絵の無いジグソーパズルを形だけから判断して組み上げることができるような優れた能力も持っていたのです。
けっきょく父親は、厳しい世の中でも生きていけるように自分の手で子供を育てると決意して、少年を連れて帰ってしまいます。
それから時は流れて少年は大人になり、小さな田舎町で事務所を開き、クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)の名で会計士として暮らしていました。
今日も、税金の支払いに困った老夫婦の問題をアッサリと解決したウルフ。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
まだ人とのコミュニケーションが得意ではない彼は、顧客にはもちろん毎日顔を合わせる事務員にさえ愛想の無い付き合いしかできませんでしたが、会計士としての能力は人並み以上に優れていました。
場面は変わって、アメリカ財務省の局長レイモンド・キング(J・K・シモンズ)のオフィス。
分析官のメリーベス・メディナ(シンシア・アダイ=ロビンソン)は、とある男の正体を調べるように指示を受けますが、自分は捜査官ではないからと断ろうとします。
しかしキング局長は彼女が10代の頃、殺人未遂の罪で更生施設に入っていたことを知っていて、それを公開されたくなければ指示に従うよう脅迫。
そのことを隠していた彼女は、履歴を偽って政府機関の職員になったという重罪を見逃してもらう代わりに、仕方無く彼の要求に従うことになります。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
調査対象の男は世界各国の大物の犯罪者と繋がりがあり、しかし彼の写真はどれも顔がはっきり写っておらず、名前も「会計士」と呼ばれていることしか分かっていません。
その男はいったい何者なのか、彼を探るキング局長の意図は何なのか。
一方その頃、ウルフは車を運転しながら、誰かと電話で会話をしていました。
相手の女性は彼に仕事を斡旋しているようで、たまには表の社会の客の依頼を受けるようにと「リヴィング・ロボティクス社」の仕事を勧めます。
どうやらウルフは裏社会の客相手の仕事もしているらしく、電話の先の女性は彼の裏の仕事のアシスタント役を務めているようでした。
彼女の勧めに従って、珍しく表の仕事を引き受けることにして「リヴィング・ロボティクス社」を訪れたウルフ。
調査に必要な資料として15年分の帳簿を用意するよう告げて帰った彼が、翌朝会社へ行ってみると、そこにはきれいに整理された資料と一人の女性がいました。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
彼女はデイナ・カミングス(アナ・ケンドリック)という会社の経理担当で、実は彼女が帳簿に不審な点があると社長に報告して今回の調査に至ったのです。
それからすぐに膨大な資料を一晩で読み解き、やはり帳簿の金の動きに不自然な部分があると見抜いたウルフは、会社の責任者にそのことを報告。
画像:インターネット・ムービー・データベースより
しかし、これが彼を巻き込む大きな事件の始まりだったのでした。
感想
原題は『The Accountant』で「会計士」という意味ですが、日本でそのまま「アカウンタント」では意味がわかりにくいということで、「会計コンサルタント」という意味を込めて『ザ・コンサルタント』という邦題になったんでしょうね。
でも『トランスポーター』なんていう馴染みの無い言葉をそのまま邦題にした例もあるし、「コンサルタント」よりも「アカウンタント」のままのほうがイメージ的にも良かったんじゃないかなという気がします。
というわけで主人公は会計士なんですが、これがただの会計士ではなくて、裏社会に通じてヒットマンとしての戦闘力や身体的能力にも長けた会計士でして。
つまり表の顔と、裏の顔を持った謎の会計士。
この主人公を『バットマン』の役でも有名なベン・アフレックが演じてるんですが、彼の新たな代表作になりそうなダーク・ヒーローとして非常に魅力的なキャラクターになってるんですよ。
さらに主人公は、高機能自閉症とかアスペルガー症候群と呼ばれるタイプの特徴を持っていて、そこがまたこれまでのヒーロー像とは違った面白さを作品に加えています。
例えば、人とのコミュニケーションがあまり得意じゃなかったり、いろいろなモノに独特のコダワリがあったり、始めたことは最後までやり遂げないと精神的に不安定になったりといった感じで。
しかも彼は、サヴァン症候群的な、数字やパターン認識に対する常人を超えた優れた能力も持っているんです。
こういうキャラクターは、これまで観た映画では古いですが『レインマン』とか、海外ドラマだと『名探偵モンク』とか、日本のドラマだと『ATARU』なんかが思い出されたりもしますが。
彼がなぜこのような謎の会計士になったのかは作中で詳細に描かれてますが、少し話が込み入ってるのでそのへんは注意して観たほうが良いでしょうね。
簡単に言うと、父親のスパルタ教育と、師匠とも言える裏社会に通じる会計士と刑務所で出会ったことで、この主人公のキャラクターが作り出されるんですが。
特に主人公に対する父親の育て方は、かなり異常と思えるほど厳しいもので。
それは他の子供とは違った特徴を持つ主人公が、厳しい世の中でうまく生きていけるようにするための親としての愛情なんですが、やっぱり常識からは大きく外れています。
そういった特殊な愛情を受けた主人公の子供の頃の様子や、現在の大人になってからの生活の様子が、こと細かく作中に描かれていて、これらが単なるアクション映画ではない印象を本作にもたらしてまして。
どちらかというとアクションよりも、主人公の生き方を中心に描いているような感じさえするんですよね。
つまり、ある意味でハンデとかコンプレックスと言える性質を持った人間が、どうにか努力して社会に馴染んで生活している様子を描いた作品のようにも思えるんです。
とはいえ、もちろんエンターテイメント性も十分にあるので、2時間ちょっとの尺をまったく飽きることなく最後まで楽しめましたよ。
途中ですぐに見当はついてしまうんですが、終盤でチョットしたサプライズ的な内容もありますし。
ですから単なる痛快なアクション作品を予想した人は、やや期待はずれに感じるかも知れませんが、これまでに無いユニークなキャラクターやストーリーが楽しめる内容になってますので。
単純なアクション映画では飽き足らない、ちょっと変わった映画が観たいという人にオススメしたい作品ですね。
そして、ラストは続編が十分にありそうな感じだったし、是非とも続編を期待したいと思えるくらい満足度の高い映画だと思いましたよ。
作品データ
●原題
The Accountant
●監督
ギャヴィン・オコナー
●出演者
ベン・アフレック
シンシア・アダイ=ロビンソン
アナ・ケンドリック
J・K・シモンズ
●日本公開年
2017年
●上映時間
128分